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SACBÉ DE LOS MAYAS  サクベ(マヤの白い道)
マヤ遺跡に行くとよく耳にする「サクベ」。 マヤ語で sac は 「白い」、be は 「道」、合わせて sacbé 「白い道」 です。  「ベ」にアクセントが有ります。

なんだ道か、と言われれば、道なのですが、マヤセンター内部の異なるグループを繋ぐサクベ、センター周辺の集落を結ぶサクベ、 或いは 異なるセンターとの間に築かれたサクベ等があり、長いものは 300Km にも及び 大規模な土木工事が必要だったようです。

サクベについて少し詳しく見てみましょう。

ジビルチャルトゥンのサクベ 1   SACBÉ 1 DE DZIBILCHALTÚN

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  (Sacbé 1 de Dzibilchaltún, vista hacia este)

広々とした真っ直ぐ一直線に伸びる ジビルチャルトゥン のサクベ 1、代表的なサクベのひとつです。 西の中央広場と東の7つの人形の神殿を繋ぐ 幅が 20m の大変広いサクベです。  写真は サクベ1西端の建造物36と建造物41の間から東方向を見たところで、中央に米粒のように小さく見えるのが7つの人形の神殿です。

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  (Mapa del área principal de Dzibilchaltún)

乾季の終わりに撮った写真で比較的緑が少なく、中央の人の通った部分が白くなっていますが、道の端は白い線で示した通りです。  この白い線の下に所々石が顔を覗かせますが、これは道を盛り上げた際の側壁です。

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  (Estructura del Sacbé)

サクベの断面を図示してみました。 大き目の石を敷いた上に砂利を敷き詰め、左右の側壁を石で積み上げて作り、表面を厚い漆喰で 覆いました。 サクベは高いもので 2.5m もあったそうで、建物と違い延々と伸びていく道ですから、巨大ピラミッド建設にも劣らない 土木工事が必要でした。

いろいろな遺跡のサクベ  SACBE'OB DE LOS VARIOS SITIOS

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  (Sacbé del sitio Labná, Yucatan)

マヤ時代の道がサクベですが、この ラブナ遺跡 のサクベは その名の通り白い道であり、側壁で盛り上げられていて、これぞサクベ、と言う 感じです。 有名な北の宮殿からアーチと展望台のある南のグループへ伸びたおよそ160m位のサクベです。

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  (Sacbé del sitio Xelhá, Quintana Roo)

これはキンタナ ロー州の シェルハ遺跡 にあるサクベ。  道の表面の漆喰が無くなり下の石ころが露出していて、歩き難い事この上ありません。 ジャガーの神殿のグループから南東に伸びる サクベです。

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  (Sacbé del sitio Tikal, Guatemala)

大規模な ティカル遺跡 にも探検家の名が付けられた広いサクベ が何本もありますが、これは集合体Q から西に伸びる規模の小さいサクベ。 現在では4号神殿に抜ける近道で、遺跡内の普通の道と 言う感じです。

発掘中のサクベ  SACBE'OB EN EXCAVACIÓN

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  (Sacbé excavado de Chichén Itzá)

サクベはマヤ社会の生活を知る上でも重要なもので、道は大体埋もれてしまっていますから、遺跡訪問でサクベを発掘している 所に出会う事があります。  これは 2008年10月に チチェン・イッツァ を訪問した時の写真で、オサリオのグループ(高僧の墓)とカスティーヨを結ぶサクベが発掘され 立ち入り禁止になっていました。 以前はこの上を歩いていたのだと思います。

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  (Escalinata adosada al sacbé del sitio Yaxha, Guatemala)

こちらはグアテマラの ヤシャー遺跡 での写真ですが、訪問時に 大々的な遺跡の修復作業が進行中で、遺跡主要部からヤシャー湖畔に伸びるサクベも発掘作業中でした。 このサクベは周囲からの高さ があり、所々にサクベに登る階段が取り付けられていたようで、その階段のひとつが掘り出されていました。

コバ遺跡のサクベ網  RED DE SACBE'OB DE COBÁ

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  (Mapa del área principal de Cobá)

上述のチチェン・イッツァには95本のサクベが張り巡らされていた事が確認されていますが、チチェンより さらに古い時代からのキンタナ ローにある コバ遺跡 も、 沢山のサクベがあることで知られています。 地図に番号が附って有るのはサクベの番号です。 地図上は 19 までしかありませんが、 45本まで確認されているそうです。

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  (Sacbé 9 para ir al Grupo Macanxoc)

この写真はグループ・マカンソックに向うサクベ 9の現在の姿です。 もう単なる道と化していますが。

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  (Sacbé 1 que llega hasta sitio de Yaxuna, Yucatan)

ここまで見てきたサクベは全て同一マヤセンター内部のサクベでしたが、コバのサクベというと、100Km 離れた ユカタン州の ヤシューナ遺跡 と繋いでいたサクベ 1が有名です。

写真はシャイベ辺りから西に伸びる道だったと思いますが、多分これがサクベ 1の出発点です。 写真では単なるセンター内の サクベですが、これが 100Km 離れたヤシューナまで繋がっていたと思うと凄いですね。 コバ-ヤシューナ街道は高いところで 2.5m の高さがあったそうです。

ウシュマル-カバー街道  SACBÉ ENTRE UXMAL Y KABAH

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  (Arco de Kabáh, terminal de sacbé desde Uxmal)

世界遺産に指定されているウシュマルが、同じプーク地域の カバー  とサクベで繋げられていた事は良く知られています。 写真はカバーの北西側の入口となるアーチで、手前の緑の部分がウシュマル から伸びてきたサクベで、階段を登り アーチをくぐるとカバーです。

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  (Sacbé que sale hacia Uxmal)

アーチの下に立って、ウシュマルへのサクベを見てみました。 このサクベを 20Km 進むとウシュマルだそうです。

こうしたマヤの都市間を繋ぐサクベは、他に アケとイサマルを結ぶものもありましたが、最新の調査では西のティホ(現在のメリダ) からアケ、イサマルを通り、更にカリブ海のプエルト・モレロス付近(現在のカンクンとシカレー遺跡の中間)までサクベで 繋がっていたそうで、その距離は実に 300Km にも及びます。

サクベの目的、用途  MOTIVO Y USO DE SACBE'OB

サクベは道ですから、通常 人や車両の使用に供されるべきものです。 しかしマヤを含めたメゾアメリカ地域には車輪の概念は あったものの、これを曳く大型の家畜が存在しなかった為、サクベは専ら歩行者の為のものでした。 荷物を運ぶには籠を背負い、 人を乗せる為には輿が用いられたようです。
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                 (Juguete con rodillas, procedente de Veracruz)

写真はベラクルス地方出土の土偶ですが、車輪は玩具に使用されただけでした。


サクベは人の移動、荷物の運搬や通信手段に用いられた他、宗教儀式でも重要な役割を果たしたようです。 また 都市間のサクベは 政治領域の維持も意味し、サクベを伸ばす事は征服、侵略の手段でもあり、自らの勢力範囲の宣言だったと言う 説明もあります。 支配下に置いた街からはサクベを通じて、貢納物、労働力や生贄の確保が行われたでしょうか。

アケとイサマルは親戚関係にあり、アケの王は従兄弟のイサマルの王に良質のトルティーリャをより早く届ける為にサクベを建設した という言い伝えもあるそうですが、あまり色々な事を書くとまとまりが無くなるので、サクベのページはこの辺で。


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