マヤ遺跡探訪
KABAH
壁面全面にチャーク像の装飾が施されたコズ・ポープで知られるカバー遺跡、ウシュマル遺跡から 更に南東へ22Kmのところにあります。

ウシュマルと並ぶ古典期終末期の代表的なプーク様式の遺跡で、ウシュマル訪問の際は是非足を伸ばして寄ってみる事 をお薦めします。

未発掘の建造物が数多くあり、全貌の解明が待たれるところですが、発掘修復された部分だけでも充分訪問する価値が あります。
                                       画像

   (訪問日 2000年8月19日、'02年4月14日、'03年9月21日、'06年11月16日)
画像
                   画像
                    (KABÁH = Señor de la mano fuerte)

KABAH とはマヤ語で「強い手を持つ男」の意味だそうですが、遺跡の入口事務所の先に出土物を幾つか並べた 庇のついた所があり、ここに写真の「強い手を持つ男」の石像があります。 手の先はロボットの ようで、鍵爪のような指がついています。

画像

                                                    画像
遺跡の地図です。 遺跡を東西に別ける形で国道261号が走っていて、入口事務所は東側にあります。  地図の外側(西側)に大きな遺構(西のグループ)が広がっていますが、調査のみで発掘されていません。  修復され見学できる建造物は、国道東側のコズ・ポープと宮殿、そして西側のアーチです。

画像
 (Vista aérea por Google earth)

空からコズ・ポープ、宮殿とアーチが確認出来ます。 大ピラミッドは禿山です。

画像
 (El Palacio, vista desde la entrada del sitio)

遺跡に入場し、宮殿方向を見たところです。 芝生が綺麗に整備されています。

画像
 (La crestería de Codz Poop, vista desde la entrada del sitio)

目を右側に転じると基壇の上にコズ・ポープが見えてきます。

画像
 (La crestería de Codz Poop)

ズームしてみました。 建物の上の屋根飾りと崩れた部屋の跡が見えるだけで、正面の壁の 装飾はまだ見えませんが…

画像
 (Fachada de Codz Poop)
                                                      画像

基壇を西側から登ってみると、正面の壁面装飾が目に飛び込んできます。 プーク様式では 鴨居の上の壁面装飾が一般的ですが、この建物は鴨居の下も装飾でピッチリ埋め尽くされています。 

画像
 (Fachada de Codz Poop)

斜め横から見てみました。 鴨居の上の装飾は殆ど崩れ落ちていて、崩れた装飾のパーツは 中庭に並べられています。

画像
 (Parte sur de Codz Poop)

コズ・ポープの南側です。 側面が崩れてアーチ型の天井が露出しています。

画像
 (Detalle de la fachada, los mascarones del Dios Chaac)

正面右(南側)の装飾のクローズアップです。 装飾の正体はこのチャーク(雨の神)像で、 全部で250位あり、ひとつのチャーク像は30位のパーツで構成されているそうです。

画像
 (Las curvas de las narices del Dios Chaac)
                                                       画像

更にクローズアップすると、チャーク像の、象のように巻いた鼻がわかります。 殆どの 鼻は先が折れてしまっていますが、右端の鼻は完全な形を保っています。

画像
 (Entrada al cuarto interior, la nariz de Chaac sirve como peldaño)

正面に5つ入口が口を開けていますが、チャーク像の鼻が階段代わりになっていて、鼻に足をかけて 登っていきます。

画像
 (Otro peldaño de Chaac para entrar al segundo cuarto)

各部屋には更に奥にもうひとつの部屋があって、奥の部屋に行くのにも、チャーク像の鼻を登っていく ことになります。

画像
 (Techo abovedado del cuarto)

内部のマヤアーチの天井です。 少し丸みを帯びていますが、綺麗な平面で仕上られています。

画像
 (Detalle de la fachada, los mascarones del Dios Chaac)

部屋から出て、再度正面を横から眺めてみます。建築当時は完成された彫刻に彩色もされていた でしょうから、その威容は想像に難くありません。

画像
 (Detalle de la fachada, los mascarones del Dios Chaac)

正面左側(北側)で一番装飾が残されている所です。 ここだけ鴨居の上のチャーク像が残って います。 

画像
 (Detalle de la fachada, los mascarones del Dios Chaac)

上の写真の入口右側のクローズアップです。 どのように30のパーツが組み合わさって いるのでしょうか。

画像
 (Patio en frente de Codz Poop)

振り返って中庭の方を見てみると、崩れ落ちたパーツが整然と並べられています。 何時の日か 修復されるのでしょうか? 階段の正面に矩形の小さな祭壇と、その向こうに丸いチュルトゥン(水溜め) が見えます。

画像
 (Las pieza de escultura Chaac, caídas de la fachada de Codz Poop)

チャーク像のパーツですが、修復が前提で並べられているように見えます。

画像
 (Altar con las esculturas de jeroglíficos en el patio)

矩形の祭壇の側面には神聖文字が並んでいますが、修復時に順序が崩れてしまい、充分解読が されていないようです。

画像
 (Chultún en el patio)

手前の円形がチュルトゥンで、溜まった水が下の水瓶に溜まる仕組みです。

コズ・ポープの役割は良くわかっていませんが、隣の宮殿にはチュルトゥンが10以上あり 貴族が居住していたようで、という事はコズ・ポープの方は祭事を司った場所だったでしょうか。

画像
 (El Palacio, vista desde la plataforma de Codz Poop)

コズ・ポープのある基壇の北端から宮殿方向を見たところです。

画像
 (Decoración de la fachada posterior de Codz Poop)

宮殿に行く前にコズ・ポープの裏側(東側)を見てみます。 鴨居下は綺麗なレース模様になって いて、その上に「強い手を持つ男」の彫刻がありました。

画像
 (Esculturas de Señor de mano fuerte en la fachada posterior de Codz Poop)
                                                       画像
「強い手を持つ男」のクローズアップです。 全部で何体のあったのでしょうか、写真の二体以外は崩れ落ちてしまって いますが、遺跡入口の一体を含めてもっと沢山あった筈です。
画像
 (La cabeza de Señor de mano fuerte, Museo Nacional de Antropología)

これはメキシコ市の人類学博物館の展示物で、強い手を持つ男の頭部です。 顔に刺青のある高貴な権力者で、カバーの 王の一人でしょうか。

画像
 (Exposicion de Museo Regional de Palacio Cantón, Merida)

別の頭部がメリダ市の地方人類学博物館「カントン宮殿」にもありました。  顔の表情が少しづつ異なるような気がします。
画像
 (Dintel esculpido del lado posterior de Codz Poop)

コズ・ポープ裏側の入口脇柱に、石像彫刻が嵌めこまれています。 当時の上流階級の衣装が偲ばれます。

画像
 (Dintel esculpido del lado posterior de Codz Poop)

これは下側の石像彫刻で、捕虜の髪を掴んでいる所のようです。

画像
 (Edificio Sur de El Palacio)

コズ・ポープの説明だけで長くなってしまいました。 宮殿他、駆け足でご紹介します。

これは宮殿の南側の建造物です。 2階から上は崩れて元の形がわかりませんが、階段下のアーチ天井の通路と 開口部を支える円柱からプーク様式が見て取れます。

画像
 (Edificio Este de El Palacio)

こちらが正面にある東側の建造物。 一層目手前の部屋の屋根は崩れて中が露出していますが、二層目はかなり 当時の形を保っています。 屋根飾りも部分的に残りますが、もともとの高さはどれだけだったでしょう。

画像
 (Edificio Este de El Palacio)

同じ建造物を南側面から撮ったものです。 一層目壁面の円柱と二層目開口部の円柱はプーク様式の特徴で、 装飾はシンプルですが洗練された美しさを持つプーク様式建造物と言えます。 写真左隅にドーナツ状の石が見えますが、 これは地上に出たチュルトゥンの入口です。 乾季の終わりの4月に撮った写真なので 芝は枯れています。

画像
 (Gran Pirámide que falta excavación)

入口方向に戻り、写真中央左の白い建物は入口事務所です。 その向こうにこんもりと山のように見えるのは 未発掘の大ピラミッドで、国道の西側にあります。 ウシュマルの占い師のピラミッドのように基壇が楕円だそうです。

画像
 (Estelas y piezas de esculturas recuperadas en el sitio)

入口事務所の裏、庇の下にある、石碑とチャークなどの石造物の残骸。 石碑はかなり風化しています。 このページの冒頭の 「強い手を持つ男」の石像もここにありました。

画像
 (Vivienda Maya Tradicional, al lado de la entrada)

同じく入口事務所裏のマヤ民家。 マヤの時代も一般民衆の家は石造りではなく、こうした簡素な 造りだったようです。

画像
 (Arco de Kabah, salida hacia Uxmal, 20Km Noroeste de Kabah)

さて最後になりました、 国道を渡り未修復の土塁を見ながら西へ進んでいくと、 サクベ(マヤの白い道) に行き当ります。 サクベの先に基壇上に築かれた大きなマヤアーチの門が見えてきます。

このアーチを通り越して20Km位行くとウシュマル遺跡だそうで、サクベで繋がっていました。 ウシュマルとの深い関係が窺がわれ ます。

画像
 (Otro lado de Arco de Kabah, Entrada antigua de Kabah)

アーチの反対側。 ウシュマルから来ると この階段を登ってカバーに到着と言う事でしょうか。  白かったサクベも今は緑の芝生で綺麗に整備されていました。


画像
 (Otro lado de Arco de Kabah, Entrada antigua de Kabah)

遺跡の周囲は一面緑に覆われていますが、西にも東にも建物の残骸が顔を覗かせます。 何時発掘の手が及ぶのでしょう?



     画像   画像