カバー遺跡から国道２６１号を南下し、直ぐに左折してプーク街道と呼ばれる州道３１号に入ります。 　カバーからの距離は１０Ｋｍ位で、殆ど通る車もないので汗が乾く暇もなくサイール遺跡に着いてしまいます。

ウシュマル、カバーと同時代の規模の大きな遺跡で、その広さは４㎢ にも及ぶようですが、カバー遺跡同様、調査はしても 殆ど発掘、修復は為されておらず、全体像は闇の中というか、土の下です。

サイールでは大宮殿と呼ばれる三層の大きな建造物を見ることが出来、その壮大さとプーク様式の見事な装飾は必見です。

2013年に再訪し写真の撮り直しをしたので、一部写真を差し替えて記事を追加しました。　青い文字と幅広の写真が新規分です。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　（訪問日　2000年 8月19日、'02年 4月14日、'06年11月16日、'13年 1月10日）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

まず遺跡の地図、 現地のパネルを加工しました。　　遺跡は広大ですが、見て回れる所は限られます。

　　　　

Google earth で空から偵察してみました。　左の画像の中央の点が展望台で、更に南に建造物があるようですが、 大きな建造物は右に拡大した州道に近い宮殿だけです。

サイールとはマヤ語で、蟻の場所（蟻の棲家？）という意味で、スペイン人が後から命名したのではなく、マヤの 言葉がそのまま残ったもののようです。

　　　　
　　　　　(Cámara abovedada que aparece de un montículo)

遺跡に入場して宮殿までは僅かの距離ですが、途中に写真のような建物の一部が露出していました。　遺跡全体では こういう所が沢山あるものと思います。

　　　　
　　　　　(Lado oeste de El Palacio de Sayil)

程なく宮殿が見えてきます。　これは宮殿の側面（西側）で、プーク様式の壁面装飾が見えます。


　(Estructura entera de El Palacio)
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
これが宮殿の全体像、南西側から撮った写真です。　中央階段の左右にシンメトリックに三層の宮殿が築かれていましたが、 東側はかなり喪失されています。　 全体像は建築様式のページの復元模型の写真で 確認できます。　宮殿には全部で 98 の部屋が設けられていたそうです。


　(La mitad oeste conserva la magnificencia de época Maya)

これは中央階段と西翼ですが、一層目は前面が崩れて部屋の天井が露出しており、二層目がかなり良い状態で 保存されています。　


　(Primer nivel de la ála oeste de El Palacio)

一層目の入口が残っている部分ですが、太い円柱の上に柱頭を載せ、その上に石のまぐさを渡して入口が確保されています。


　(Segundo y Tercer nivel de la ála oeste)

西翼二層目の中央の装飾です。　中央に大きなチャーク像が配されています。　三層目は比較的シンプルな造りです。


　(Segundo nivel de la ála oeste)

二層目に登って横から眺めてみました。　入り口の円柱に加えて壁面も円柱を並べて作られています。


　(Escultura de Dios Chac en la fachada del segundo nivel)
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
二層目中央の装飾の拡大です。　大きな雨の神チャーク像ですが、西翼全体の中央にあり、とても強い 印象を与えます。　


　(Escultura de Dios Descendente en la fachada del segundo nivel)

中央のチャーク像の左右には、一対の光臨する神の装飾があり、これは右の方。　降臨する神の両側にあるのが蛇の飾り だそうですが、随分寸詰まりの蛇です。


　(Escultura de Dios Descendente)

これが光臨する神の部分です。　しゃがんだ神が逆立ちしていると言ったらわかるでしょうか。　逆Ｍ字開脚です。　 このモチーフはキンタナロー州海岸地方の後古典期遺跡によく見られるもので、プーク地方では他にあったでしょうか？

　(Segundo nivel de la ála este de El Palacio)

二層目の東翼は写真の通り、無残な姿です。


　(Tercer nivel de la ála oeste)

三層目に登って、西翼です。　シンプルな造りですが、屋根が残った部屋が３つあります。


　(Tercer nivel de la ála este)

三層目東翼はこれだけ。　あとは’つわものどもが夢の跡’ぺんぺん草の世界です。

　(Un edificio de estilo puuc sobre la loma norte de El Palacio)

北側に目を転じると何やら建造物らしきものが見えました。 超望遠で撮ってみるとプーク様式の宮殿風の建物があります。　多分地図でプーク街道の 北にある建物だと思いますが、道がありません。

　(El Mirador de Sayil)

サイール遺跡は普通、宮殿を見学してお終いですが、地図では他にも遺構があるので、２回目の訪問時に サクベに沿って南へ行ってみました。

強い太陽の照り返しの中、結構歩きます。　瓦礫に囲まれて、高い屋根飾りを持つ建物がありました。　 展望台と称される建造物です。　もともと ５部屋を持つ神殿だったそうですが、現在では写真の南側を残し、北側は 崩れ落ちています。


　(El Mirador de Sayil)

これが展望台の北側です。　この先の道はマチェテで灌木を切り開いていかないと進めません、更に南には南の宮殿や球戯場がある筈ですが、 諦めました。　もと来た道を引き返します。

　(Estelas conservadas en el sitio)

入口に戻る少し手前に写真のような石碑が保存されていました。　かなり風化しています。



　(Fragmentos de piedras labradas)

遺跡の入り口事務所にも石造物の断片が沢山保護されていますが、やはりあまり状態はよくありません。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(Estela No.5 de Sayil, Museo Nacional de Antrologia, D.F.)

状態の良い石碑がメキシコ市の人類学博物館で展示されていました。　サイール５号石碑です。　足腰の動きからマヤ暦の 祝いに際して踊っている様子と解釈されていますが、こんな立派な石碑も残されているサイール遺跡、どんどん発掘調査を して貰いたいものです。　遺跡は広大です。



６年振りのサイール訪問でしたが、宮殿が以前より綺麗になった印象を受けました。　強い太陽の日差しや雨風の為、屋外にある石造建造物には苔が 生えて汚れて行くものと思いますが、定期的にクリーニングしているのでしょうか。　適切な遺跡の維持管理は必要でしょうが、今回はちょっと 綺麗すぎました。