北東平原地域と言っても要するに
チチェン・イッツァの事で、
プーク、 リオ・ベック、チェネスの場合は周辺に同じ様式の遺跡が 広がりますが、チチェン・イッツァの場合はマヤパンのように
後の時代にチチェン・イッツァの様式を汲むものがあっても、同時代にチチェンに比肩されるような遺跡はありません。
と言う事はチチェン・イッツァのページを見て貰えば事足りる訳ですが、チチェン・イッツァには二つの異なる様式が混在するので、
ここで整理しておきましょう。
Maqueta de El Castillo, Chichén Itzá, Estilo Chichén-Tolteca (Museo de La Cultura Maya, Chetumal)
チチェン‐トルテカ様式の チチェン・イッツァ・カスティーヨの立体模型 (チェトゥマル・マヤ文明博物館)
二つの様式とは、マヤ‐チチェン様式と 写真のカスティーヨに見られるチチェン‐トルテカ様式で、前者は後期プーク様式と共通性を有し
ほぼ同じ様式と言えますが、後者は装飾のモチーフもプーク様式とは全く異なり 中央高原のトルテカ様式との類似性が見られます。
Conjunto de las Monjas 尼僧院。 Anexo Este 東別院。
Detalle del Anexo Este 東別院の細部。
マヤ‐チチェン様式、つまりプーク様式は、チチェン・イッツァの南の地区に多く見られ、尼僧院の東別院は壁面下部までプーク様式の
華麗な装飾が施されています。
プーク様式の詳細は
プーク様式 の項を参照下さい。
マヤ地域に何故いきなり中央高原のトルテカ様式が顔をだすのか?
以前はトルテカ人がチチェン・イッツァに移り住みトルテカ様式
を持ち込んだと言う説がありましたが、トルテカ人の都 トゥーラがチチェン・イッツァと時代的に重複する事から、現在では 中央高原と
マヤ地域の間を交易で行き来したプトゥン マヤ人等を介して、文化の交流が行われたと言う説が有力です。 マヤ人がトルテカ様式を取り込み
発展させたのが、このチチェン・イッツァのマヤ・トルテカ様式と言えそうです。
El Castillo o Templo de Kukulcán カスティーヨ、別名
ククルカンの神殿。
Rampa con serpiente empulmada, El Osario Columnas Serpentinas de Templo de los Jaguares
オサリオの階段手摺り下にある羽毛のある蛇。 ジャガーの神殿のヘビを模った柱。
チチェン‐トルテカ様式の特徴としてはまず 四方に階段が付いた正方形の基壇を持つ建造物があげられ、蛇をモチーフにした装飾が多く
用いられます。 カスティーヨが典型的で上部神殿北側入口にはヘビを模った柱があり、同じく北側の階段手摺り下には羽毛のある蛇が置かれています。
オサリオはカスティーヨより小振りですが同様の方形のピラミッドで蛇の頭の彫刻は全ての面に見られ、大球戯場に付設されたジャガーの
神殿にも蛇を模った太い柱が見られます。
Plataforma de Aguilas y Jaguares y sus fachadas ワシとジャガーの基壇と浮き彫り彫刻。
神殿を持たない方形の基壇だけの構造物もトルテカ様式ではよく見られ、チチェン・イッツァでは 金星の基壇、ワシの基壇、ジャガーの基壇等があり、それぞれワシ・ジャガーや金星にまつわる浮き彫り彫刻が施されています。
Templo de los Guerreros y Pilastras con bajorelieve 戦士の神殿と彫刻の施された角柱。
戦士の神殿と柱廊は、トルテカ様式のトゥーラでもよく似た遺構を見る事が出来ます。
戦士の神殿前には沢山の角柱が並び、それぞれ異なる戦士の像が刻まれており、往時は色鮮やかに彩色されていたようです。
Bajorelieves de Jaguar, Chichen Itza (izquierda) y Tula (derecha)
壁面装飾、左がチチェン、右がトゥーラ。
壁面装飾のモチーフとしては 写真のジャガーの他、ワシ、戦士、髑髏、金星などが多く用いられました。 横向きに歩くジャガーの姿は
酷似します。
Columnas en la forma de Atlantis, Chichen Viejo チチェン・ビエホにある
アトランティスの柱。
アトランティス像もトルテカ様式の特徴で、戦士の神殿の上部構造やチチェン・ビエホにアトランティスの柱や支えが見られます。
トゥーラ には巨大なアトランティスの柱があります。
Estandarte y Atlantis en Museo Regional de Merida 旗持ちとアトランティス、メリダ地方博物館。
Chac Mool en Museo en Merida y Museo Nacional de Antropología 博物館のチャックモールの展示。
生贄の心臓が置かれたと言われるチャックモールや旗持ちもトルテカの特徴になり、遺跡のあちこちに風化した石像がありますが、状態の良い
ものはメリダの地方博物館やメキシコ市の人類学博物館等に移されています。
遺跡併設の博物館にも一部展示されているので、遺跡訪問の際は是非立ち寄る事をお薦めします。
El Caracol, Chichén Itzá カラコル、チチェン・イッツァ。 El Caracol, Mayapán
カラコル、マヤパン。
El Castillo, Mayapán カスティーヨ、マヤパン。 El Castillo, El Meco
カスティーヨ、エル・メコ。
最後に後古典期にまでチチェン-トルテカ様式が伝わった例。 マヤパンはチチェン・イッツァー崩壊後にイッツァー人が移り住んだとも
言われ、カスティーヨのみならずカラコル(天文台)のコピーもあります。 エル・メコには階段が正面だけですが、階段手摺り下には蛇の頭が置かれた
カスティーヨと呼ばれるピラミッドがありました。