"ROSTROS DE LA DIVINIDAD" II
マヤ特別展 「聖なる王の素顔」 その他展示物
マヤの特別展示会 "Rostros de la Divinidad : los Mosaicos Maya de Piedra Verde"
「聖なる王の素顔 : マヤの翡翠のモザイク面」。 展示の中心は 1部で紹介した緑の仮面ですが、仮面以外にも各地の博物館から
マヤの代表的な展示品が集められています。
展示会期間中それぞれの博物館では目玉が歯抜けの状態になってしまいますが、一カ所に集められている展示会は 見る方には好都合です。
2部では仮面以外の代表的なマヤの逸品を見ていきます。
(訪問日 2011年11月29日)
(Nuevo sede del Museo Arqueológico de Occidente)
グアダラハラでの同展示会は、パンアメリカン・スポーツ大会の時期に合わせ、新しい西部考古学博物館のこけら落としの
意味を込めて開催されたようです。 写真が新しい博物館 (Museo Arqueológico de Occidente) が入る建物で、 18世紀に建てられ、
修道院として永年使われたあと 1914年から 15軍区の建物と利用されていた歴史的な建造物です。
尚 展示会では以下の博物館から展示物が集められていました。
国立人類学博物館 Museo Nacional de Antropología (MNA)
カンペチェ・マヤ考古学博物館 Museo de Arqueología Maya (MAM Campeche),
Reducto de San Miguel, Campeche
ユカタン地方人類学博物館 Museo Regional de Antropología (MRA Mérida),
Palacio Canton, Mérida, Yucatan
チアパス地方博物館 Museo Regional de Chiapas (MR Chiapas),
Tuxtla Gutierrez, Chiapas
キンタナ・ロー INAH センター Centro INAH Quintana Roo (INAH Quintana Roo)
カンペチェ INAH センター Centro INAH Campeche (INAH Campeche)
パレンケ遺跡併設博物館 Museo de Sitio de Palenque (MS Palenque)
トニナ遺跡併設博物館 Museo de Sitio de Toniná (MS Tonina)
ポモナ遺跡併設博物館 Museo de Sitio de Pomoná (MS Pomona)
プエブラ・アンパーロ博物館 Museo Amparo, Puebla
展示会の入り口エリア Área de Entrada
では早速展示会へ。 入り口にはマヤのT字型窓が配され、正面にトニナの球戯のレリーフが。 これは国立人類学博物館のマヤ室でも
最初に目にする展示物です。
(Portal de la Exhibición "Rostros de la Divinidad")
(Relieve de Juego de Pelota en la Exposición)
頑張って国立人類学博物館から持ってきたな、と思ったのですが、ちょっと待って。 このレリーフ 12日前に国立博物館にありました。
と言う事はこれは複製? 複製と断りがなかったので、現場では実物と思ったのですが、よく出来ています。
(Relieve de Juego de Pelota, Toniná, MNA)
日本に戻ってから写真を確認しました。 上は 12日前の国立博物館、つまり特別展が開催中、下が2009年に同じく国立博物館で撮ったもので、
12日前の国立博物館の方は部分的に修復されていますが、2009年に撮ったものと同一です。 と言う事は特別展の方は複製です。
一般の見学者は複製とは思わないでしょう。 危ない、危ない。 (^-^;
トニナのこの球戯のレリーフには 727年の球戯が刻まれ、20年前に亡くなっているキニチ・バークナル・チャーク (在位 688-707?)
が左の冥界の側にいて、右に相対するのがキニチ・イチャーク・チャパト (在位 723-739~)だそうです。
最初の展示室 Primera Sala
入り口の球戯のレリーフは疑問符付きでしたが、でも他に素晴らしいものが沢山あるので心配無用です。
(Sala de Exposición)
緑の仮面にいく前に展示室がふたつあり、最初の展示室はマヤ人の容姿に迫る展示物が集められ、比較的お馴染みのものが多かったよう
です。
(Figurilla de Jugador de Pelota, Jaina, MNA)
これも国立博物館でお馴染みのハイナ出土の球戯者の小像。 正面からだけでなく左右からも見れたのが良かったですが、国立博物館
にも同じものが展示されていました。 型取りされた素焼きなので同じものがあるのかどうか? 詮索は止めます。
(Dios Bufón, Tonina, MNA) (Excentrico con perfiles de K'awiil, El Palmar, MNA) (Tapa con imagen de señor fallecido [Facsimile],
Becan, INAH Campeche)
左も中央も国立博物館で常設展示されているもので、左がトニナ出土のブフォン神、中央は黒曜石で作られたエクセントリック石器で、背中
合わせに2人の全身像が彫られた異色のものです。 両者とも国立博物館では不在、つまり本物がここに来ています。 右はベカン出土の
容器の蓋で取っ手がトウモロコシの神の頭部です。 これは複製だそうですが、言われなければわかりません。 カンペチェ INAH センター
蔵。
(Perfil de Estuco del Dios del Maíz, Jaina, MRA Mérida) (Hacha Votiva, MS Palenque) (Figurilla de Jade, Cenote de Chichén Itzá,
MRA Mérida)
これはトウモロコシの神で、左がハイナの漆喰製のものでメリダの博物館、中央が球戯の石斧でパレンケ博物館、
右はチチェン・イッツァのセノーテに奉納された翡翠の小像でメリダの博物館からです。
(Cabezas Esculpidas de K'inich Ajaw, El Palacio, MS Palenque) (Plato Policromado de Murciélagos, Balamkú, MAM Campeche)
左の白い頭部はパレンケの大宮殿からのもので、王を表す石灰岩の彫刻に漆喰が施してあります。 パレンケ博物館蔵。 右はカンペチェの
博物館からバラムク出土のコウモリが描かれた彩色皿です
(Vasija con personaje sacrificado [Facsimile], Becán, MAM Campeche)
2001年にカンペチェ州ベカンの建造物 9 の葬室から発見された彩色容器が展示されていました。 でも残念ながら精巧に作られた複製品。
2010年に始まった特別展でオリジナルが展示されていた筈ですが、2011年 11月からトロントで別の展示会が開催されていて、オリジナル
はカナダへ出張中!
古典期前期の蓋付き彩色容器が破損せずに完全な形で発見されたもので、冥界を表すワニの口からトウモロコシの神が顔を出すという特異な
デザインが 浮き彫りと細かい彩色で表現された逸品です。 古色を帯びたオリジナルが見たかったところですが、カナダから戻ったら
カンペチェのマヤ考古学博物館に展示されるのでしょうか。
(Lápida de Cautivo, Toniná, MS Toniná)
これは捕虜が刻まれたチアパス州トニナの石板。 2003年にトニナに行った時は展示されておらず、6 日前にトニナまで足を運んだのに
特別展へお出かけ中、絶対ここで見なくてはならないものでした。
よく似た別の捕虜の石板がトニナの博物館で今回も展示されていましたが、このモニュメント 153 の方が有名なのは、彫られている
のがカラクムルの戦士であり、トニナの支配者4 (在位 708-721年)がカラクムルから捕虜を取っていたと言う歴史的事実を
物語る石板だからです。
二番目の展示室 Segunda Sala
国立人類学博物館で始まった最初の特別展とはスペースの関係でフロアプランが異なりますが、グアダラハラではここからが二番目の
展示室になります。
(Sala de Exposición)
入り口のパネルにはマヤの世界観が説明されていますが、二番目の部屋には文字の刻まれた展示物が多いようです。
(Valva con relieve de personaje en ceremonia ritual, Jaina, MNA)
(Caracoles con imágenes de calaveras, tumba real de Ek' Balam, MRA Mérida)
ショーケースの中は貝の彫刻で、左は二枚貝に祭祀を執り行う人物が彫刻された国立博物館蔵のもの、右はエクバラムの王の霊廟
にあった巻貝に骸骨を彫ったもので、メリダの地方博物館蔵です。
(Respaldo de Trono con Representación Mítica [Facsimile], Cuenca del Río Usumacinta, Museo Amparo Puebla)
プエブラ市にあるアンパーロ博物館から彫刻された玉座の背もたれが出品されています。 ウシュマシンタ川流域からのもので、
玉座の背もたれは、上半身が彫られたピエドラス・ネグラスのものが有名ですが、こちらは全身が彫られています。 右は太陽神
イッツァムナ、左が月の神の イシュチェルのようです。 残念ながら出品は複製でした。
(Tablero de los 96 Glifos, Anexo de la Torre de El Palacio, MS Palenque)
パレンケの 96文字の石板が明るい所に展示されていました。 パレンケ晩年の王 クック・バラム(即位 764年) により作られた
王名表で、キニチ・ハナーブ・パカル1世 (即位 615年) から歴代の王名が綴られているそうです。 宮殿の塔の近くで発掘された
時につるはしで割れてしまいましたが、写真の通り修復されています。 周囲に小さい穴が開けられいて 玉座の座る部分に据えられていた
ようです。 パレンケ博物館蔵。
(Fragmento de Estela de Guerrero con tocado de serpiente, MS Palenque)
パレンケでは石板や漆喰の彫刻が多く、石碑はあまりないのですが、石碑の断片が展示されていました。 初めて目にするものです。
蛇の頭飾りを被った戦士との事ですが、パレンケの何処から出土したのでしょう? パレンケ博物館蔵です。
(Estela de Piedra Caliza, Estructura I, Calakmul, MAM Campeche)
カラクムルでは風化して図像がが読み取れない石碑が多いのですが、図像が明瞭な石碑が展示されています。 文字が見当たらないので
断片でしょうか。 出土場所は建造物1と説明書きにありますが、石碑の番号も刻まれた王の名前も書かれていませんでした。
カンペチェのマヤ考古学博物館から。
(Placa de Jade, Cenote de Chichén Itzá, MRA Mérida)
メリダの地方人類学博物館に展示されている翡翠のプレートがアクリル台に載せて展示されていて、裏面まで見ることが出来ました。
チチェン・イッツァのセノーテに投げ込まれていた奉納物ですが、古典期のものが後の時代に使いまわしされたようです。 こういう
奉納物は数多く回収されメリダの博物館に展示されており、2日前に行きましたが、このプレートが置かれていた場所には別の翡翠の
ペンダントが置かれていました。
(Vaso Estilo Códice, el Señor del Petén, Quintana Roo, Centro INAH Quintana Roo)
このコデックス様式の壺は初めて見るもので、部屋の中央に置かれていたので一周回って写真を撮りました。 ペテンの人と
名付けられたこの壺は玉座に座った人物が主役で多分文字は所有者の名前と壺の用途が書かれているものと思います。 出所は
書かれていませんが、キンタナ ローでペテンですから州の南部になるでしょうか。 キンタナ ロー INAH センター所蔵なので、
倉庫にしまわれていて博物館では展示されていないものだと思います。
(Glifos de Estuco con la Inscripción K'ahk' Ti'isI, Edificio 1, Grupo XVI, MS Palenque)
(Plato Policromo, MRA Mérida)
漆喰製のマヤ文字はパレンケのグループ XVI からのもの。 「球戯の近くで」と言うような比喩的な表現で、何等かの祭礼を意味するようです。
パレンケ博物館蔵。 右はメリダの博物館からマヤ神話の双子の兄弟が描かれた彩色皿です。 出所不明。
(Plato Policromo Estilo Códice,Tumba 4 Subestructura II-B, Calakmul, M. Campeche)
(Vasija Policroma con Guacamaya, Balamkú, M. Campeche)
左は 緑の仮面1部で紹介済みですが、カラクムルの建造物 II B のユクノーム・イチャーク・カック王の墳墓からの彩色皿で、
王の名前が書かれています。 右はバラムク出土のコンゴウインコが描かれた彩色皿。 ともにカンペチェのマヤ考古学博物館から。
(Cerámicas Policromas y Estilo Códice)
彩色土器が4点。 右端は上にあるコンゴウインコの器で、真中の壺2点は下に拡大画像があります。
(Vaso Estilo Códice con Representación de Ave Antropomorfa, Calakmul, M. Campeche)
(Vaso Estilo Códice de Personaje con Tocado de Ave, Centro INAH Quintana Roo)
左はカラクムル出土の擬人化された鳥が描かれたコデックス壺、カンペチェの博物館蔵で、人面を付けた鳥が歩く様はユーモラスと
言うか…。 右は鳥の被り物を付けたキンタナ ロー州出土の彩色コデックス壺、キンタナ ロー INAH センター所蔵です。
(Nucleos de Obsidiana, Kohunlich, Centro INAH Quintana Roo)
(Espejos Circular, Tumba 10, Edificio 21, Tenam Puente, MR Chiapas,
Espejos, Dzibanché, INAH Quintana Roo)
黒曜石と鏡の展示もありました。 黒曜石はメキシコ中央高原かグアテマラ高地から交易されたもので、塊の形で交易された後必要に
応じて加工されたようです。 コフンリッチからのものでキンタナ ロー INAH センター蔵。
小さい方のふたつの鏡はシバンチェ出土
で赤鉄鉱製、同じくキンタナ ロー INAH センターから。 大きい方の鏡は黄鉄鉱が張り付けられたものでチアパス州のテナム・プエンテ
建造物 21 の墳墓 10 出土で、チアパス地方博物館所蔵。
パカル王の仮面の展示室 Sala de Pakal
(Sala de Exposición - Máscara de Pakal Grande)
ここから仮面の展示が始まり、最初の仮面はパレンケのパカル王の仮面です。
(Sala de Exposición - Máscara de Pakal Grande)
パレンケ関連の展示物が併せて展示されます。
特別展全体ではパレンケ関連、カラクムル関連のものが多く、それぞれもう少しまとめてくれると判り易いのですが…。
(Cabeza Escultórica de Chaak, Grupo de los Murcielagos, MS Palenque)
(Tablero del Bulto (Fragmento), Grupo XVI, MS Palenque)
左は建物の外壁を飾ったチャーク神像で石灰岩の彫刻に漆喰を塗って彩色されています。 パレンケ、コウモリのグループから。 右は
グループ XVI からの石板の断片で、包みの石板と呼ばれるものです。 パレンケではカトゥンの変わり目に奉納物を包んだ袋を捧げた
ようで、 731年のカトゥンの変わり目にアーカル・モ・ナーブ3世が臣下と共に準備をしている様子と考えられます。 パレンケ博物館蔵。
(Cabeza Esculpida de Anciano, MS Tonina)
これはトニナ博物館からの老人の頭部彫刻で、鉤鼻で 頭蓋変形と鼻飾りはなく、パカル王の翡翠の腰飾りの老人像と類似するとの事です。
トニナはパレンケとは敵対関係にありましたが、地域的に近かった為でしょうか。 石灰岩の彫刻をベースに漆喰彩色されたもので、
彩色はまだ一部残っているようです。
(Cabeza Esculpida de K’inich Ajaw, Templo de la Cruz, MS Palenque)
十字の神殿から発見された頭部彫刻は赤や青で彩られ、太陽の神 キニチ・アハウと考えられますが、展示会の説明では一歩
進めて、パカル王が太陽の神の姿をとっているという解釈でした。 パレンケ博物館蔵。
(Cabezas Esculpidas de K’inich Janaab’ Pakal [Facsimiles], MS Palenque)
(Concha de Cauac, El Corozal, Centro INAH Quintana Roo)
パカル王の墳墓にあった王の若いころの頭部彫刻は複製が展示されていました。 実物は国立博物館に居残り。 30歳と12歳の頃の
素顔が忠実に表わされていると言う事で、翡翠の仮面復元のベースになりました。
ウィッツと呼ばれる聖なる山は生命が生まれ出る地下世界との出入り口にあたり、山の怪物たるカウアック神で表されますが、右はこの
カウアック神が貝に彫刻されたもの。 キンタナ ロー州南部コロサルからのもので、キンタナ ローINAH センター蔵。
(Jeroglífico de Estuco, Templo Olvidado, MS Palenque) (Valvas de Spondylus Princeps, Cobá, Centro INAH Quintana Roo)
(Vaso estilo Códice en Negativo con Imágenes de Aves, Centro INAH Quintana Roo)
左はパレンケの忘れられた神殿の柱を飾っていた漆喰製の文字で、肩書を示す文字のようです。パレンケ博物館蔵。 中央はコバ出土の
スポンディラス貝でこれは王族の放血の儀式で血を貯める為に使われたようです。 右はフラミンゴのような水鳥が陰画された黒色土器で
すが、説明書きが間違って別の展示品のものに入れ替わっていて詳細不明。 スポンディラス貝と黒色土器はキンタナ ローINAH
センター蔵です。
通路 - 石碑とオシュキントック Pasillo
パカル王の仮面の展示室の先は通路になっていて、興味深い石造物が展示され、奥にはオシュキントックの墳墓が再現されています。
(Exposición en el pasillo)
これが石造物の展示で、真中の縦長の青いケースはオシュキントックの墳墓です。
(Lápida de cautivo “El Orador" y “El Escriba”, Torre de El Palacio, MS Palenque)
これはまたパレンケからですが、史実が明らかになる興味深い石板です。 この石板は大宮殿にある塔の壁面を飾っていたもので、
石板に刻まれているのはピエドラス・ネグラスのヨナル・アーク2世の高官であり、キニチ・アーカル・モ・ナーブ3世の軍事指導者
チャック・スーツにより 725年の戦闘で捕虜になったようです。
石板はそれぞれ”弁士”、”書記”と題されていて、
捕虜は軍人ではなく文官だったのでしょうか。
(Exhibición de las réplicas en Museo sitio de Palenque)
この写真は 11月 19日にパレンケ博物館で撮ったもので、右の石板は書記の捕虜の石板の複製です。 また中央で白く光っているのは
96文字の石板の複製で、これも特別展の展示物。 地元のパレンケ博物館はこの特別展とトロントの展示会の為にかなりのものが
留守中で少し寂しい状態でした。
(Tableros con relieves, Templo superior de Edificio 4, MS Pomoná)
パレンケの石板の向かいに素晴らしい状態の石板があり、タバスコ州ポモナからのものでした。 ポモナは 11月20日に行ったばかりで、
現地には立派な博物館が併設されていましたが、こんな素晴らしい石板があるとは知りませんでした。 正装した貴族が手に提げた袋には
雨の神チャーク(左)と太陽の神キニチ・アハウ(右)が描かれています。(チャークとキニチ・アハウの部分を拡大して貼り付け
ました。) 貴族はポモナの王なのでしょうか。
(Escalón de Cautivo, Edificio de los Cautivos, Dzibanché, Centro INAH Quintana Roo)
もう一つの石造物がこれ、キンタナ ロー州シバンチェ遺跡の虜囚の神殿から、虜囚が刻まれた階段の石彫りです。 キンタナ ローINAH
センター蔵。 1994年に発掘されたものですが、現地まで足を運んでも目にすることが出来るのはボロボロに風化したものだけで、状態の
良かったものは遺跡から持ち出されたようです。
(Templo de los Cautivos de Dzibanché y peldaños muy erosionados bajo techado)
左の写真は虜囚の神殿で、左側の覆いの下には右の写真のようなボロボロになった石彫りがあります。 階段に捕虜が全部で何人刻まれて
いたのかわかりませんが、保存された中にはカラクムル初期の王ユクノーム・チェーン1世のものもあり、特別展の説明書きには
400-500AD と古典期前期にあたる年代が付されていました。
(Espátulas de de hueso, Tumba 8 de Estructura CA-14, Oxkintok, MRA Mérida)
オシュキントックの建造物 CA-14 からの墳墓 8 は1部で紹介済みですが、ここでは副葬品の骨製のヘラです。 ヘラ先が手になって
いるものや、軸に細かくマヤ文字が刻まれたものなど、主たる副葬品の貝製胸飾りの工芸水準に匹敵するものと言えるでしょうか。
その他の仮面の展示室 Sala de Otras Máscaras
この先はカラクムルやシバンチェの仮面が紹介され仮面が中心になりますが、仮面以外の展示品もあります。
(Reproducción de Cámara 203 de Templo de los Cormoranes)
一度通路を抜け回廊に出て、別の部屋に入り直し。
(Plato con Imagen del Dios del Maíz, Tumba 4, Subestructura II-B Calakmul, Centro INAH Campeche)
説明書きによるとこの見事な彩色皿はカラクムルの建造物 II B 墳墓 4 の副葬品で、描かれているのは羽をつけた手足を持ちジャガーのパンツ
をはいたトウモロコシの神で、古典期前期のものとなっています。 建造物 II B 墳墓 4 であれば被葬者はユクノーム・イチャーク・カック王
になるのですが…。
(Página 44 de Arqueologia #75)
雑誌 arqueologia #75 ではこの彩色皿は建造物 II B ではなく、建造物 XX 墳墓 1 からの最新の発掘物として紹介されており、どちらが
正しいのでしょうか?
展示会の説明書きでは カンペチェ INAH センター蔵と書かれていましたが、まだ博物館に展示されていないものかもしれません。
(Vasija Trípode con la Deidad del Pajaro Principal y Mono Araña, Tumba 2,
Estrutura IV-B, Calakmul, MAM Campeche)
これもカラクムルからの三足黒色土器で、建造物 IV-B 墳墓 2 の副葬品。 蓋の飾りになっているのはポポル・ブフ神話に出てくる
ブクブ・カキッシュで、容器に取り付けられているのはクモザルとの事。 500-560AD、マヤ考古学博物館カンペチェ蔵。
(Tapete Funerario, Tumba 1 de Estructura III, Calakmul, MAM Campeche)
カラクムルの建造物 III 墳墓 1 には翡翠の仮面および胸飾り、腰飾りがありましたが、王の亡骸の脇に種子と貝が刺繍された敷物が
ありました。 1998年に発見されたもので、一部原型を留めていたとは言え、種 6630個、貝片 1648個を2年かけて修復したそうで、
気が遠くなるような話です。
天界、地上界、冥界を表し、焼き畑や生贄の血も表現されていたと言う考古学的考証も修復の手掛かりになったようです。
(Cabecita del Dios del Maíz, El Palacio, Cabeza antropomorfa de K'inich K'an B'alaam, Templo XIV, y Figurilla antropomorfa con deformación, Grupo B, MS Palenque)
またパレンケに戻って太陽の神殿脇にある 14号神殿から、カン・バラム2世の漆喰頭部彫刻(中央)、頭部変形が顕著です。
左は大宮殿からのトウモロコシの神の小さな頭部、右がグループBからの焼き物の小像、ここでも頭部変形が認められます。 全て
パレンケ博物館蔵です。
(Vaso cilíndlico policromado con diseño de cormoran, Camara 203 de Templo de los Cormoranes)
(Plato con pez, Templo del Buho, Dzibanché, Centro INAH Quintana Roo)
最後にシバンチェからの彩色土器。 左は鵜の神殿 203号室の墳墓(1部で仮面を紹介済み)にあった副葬品の壺で、
鵜が描かれていて神殿の名前の由来になりました。 右は鵜の神殿の裏にあるミミズクの神殿の階段の窪みから仮面と共に発見された
絵皿で魚が描かれています。 古典期後期、キンタナ ロー INAH センター蔵。
(Cerámicas de Cámara 201 de Templo de los Cormoranes, Centro INAH Quintana Roo)
鵜の神殿 201号室の仮面も彩色土器が合わせて展示されていました。 特に説明書きは無かったのですが、シバンチェからの古典期後期
の壺なので写真を撮ってありました。
以上、特別展示会 "Rostros de la Divinidad" での翡翠の仮面以外の展示品を展示順に沿って見てきました。 主だった展示品は全て
網羅していると思います。
展示はもう少しパレンケのものやカラクムルのものをまとめてくれると理解がより容易だったような気がしますが、それにしても
これだけの展示物を集めたのは INAH の意気込みが感じられます。 そのうちこの特別展示会を特集した arqueología の特別号が
出版されるのではと思いますが。