2010年に来た時は 11月18日で、木曜日と平日でしたが特別室は閉まっていました。 日曜日以外は開いていると言う話も聞いており、
今回は 1月13日の火曜日に行き 初めて中に入る事が出来ました。 帰国前日の 24日土曜日にもう一度行ったのですが 今度は閉まっており、受け付けに
いつ開けるのか聞いてもあまり釈然としません。 週末は避けた方が良いかもしれません。 博物館の開館時間は朝9時から
午後4時までで、土日だけ12時から1時半まで昼休みで閉まります。 月曜日は休館。
展示室の照明は暗めで 反射光の映り込みもあり、なかなか写真が綺麗に撮れませんが、以下特別室の展示品を順にご紹介していきます。
運悪く訪問日に特別室が閉まっていたら、このページが参考になると思います。
(Vasija Tipo Florero, Tikal, Preclásico Tardío 250BC-250AD)
(Olla y Cántaro con borde evertido y vertedera, Tikal, Preclásico Tardío 250BC - 250AD)
始めにティカル遺跡からの土器類。 ティカル王朝が最盛期を迎える古典期ではなく、先古典期に遡る古い時代の釉が用いられた土器類で、
優雅に成形された大型の容器と、赤い線で模様の付けられた壺類で、時代は紀元前後、今から 2000年位前のものになるようです。
(Vasos de silueta compuesta con decoracion negativa, Tikal, Preclásico Tardío 250BC - 250AD)
同じくティカルから先古典期の土器類で、上の3つとおよそ同時代と思われますが、こちらは黒い陰影で模様が付けられています。
ティカル王朝以前の興味深い遺物です。
(Cuenco Trípode, Kaminaljuyu, Clásico Temprano) (Fragmento de incensario, Costa Pacífica, Clásico Temprano)
左は同じくティカル遺跡からですが、テオティウアカン的な図柄が陰刻された三足容器で、時代は古典期前期です。 378年にテオティウアカンが
ティカルへ侵入したと考えられ、その頃の遺物になるようです。 右は同じくテオティウアカン様式の香炉です。 出土地は南部海岸地域になり、
同時代にテオティウアカンがグアテマラ南部にも浸透していた事がわかります。
(Cuenco policroma con tapadera, Tikal, Clásico Temprano 250-600AD)
ティカル遺跡から古典期前期の典型的なマヤ様式の蓋付き彩色容器で、黒、オレンジ、ベージュ で様式化された蛇が描かれ、蓋や
縁取りは幾何学模様で飾られます。
(Vasija policroma con tapadera, Río Azul, Clásico Temprano 250-600AD)
これはウアシャクトゥンから更に北東へ 80Km、メキシコとベリーズ国境に近い秘境にあるリオ・アスールからの蓋付き彩色容器です。
墳墓 19 に納められていた副葬品で、中に残された残滓からカカオ飲料を入れる為の容器だったと考えられ、漆喰で王の名前とカカオの文字が
描き表されているそうです。 この写真ではわかり辛いですが、
蓋はネジ式になっていて
工芸技術の高さを示す逸品です。 テオティウアカンはティカルからウアシャクトゥンを経てリオ・アスールまで到着したと言われ、この彩色容器も
テオティウアカンの影響を受けた古典期前期のものになります。
(Mascara funeraria de jade, Tikal, Clásico Tardío 600-900AD)
こちらはティカルの埋葬 190 で発見された翡翠の葬送面で、高さ 34.5cm 幅 29.5cm と大型で立派な仮面です。 あちこちの文献でその写真が引用され
特別室の目玉のひとつです。 仮面は被葬者の肖像でしょうか。 鳥の頭飾りを付け、文字が刻まれた半円形のパーツと 三つ葉型をした貴族の守護神である
カウィール神のパーツが 頭飾りの上に取り付けられ、口には魔除けでしょうか、翡翠の玉を含みます。 赤や白い部分は貝細工です。
埋葬はティカルの中心から 1 Km も離れた所で発見され、博物館の説明書きによると被葬者は王位につけなかった高位の貴族との事で、
カラクムルを破ってティカルを再興したハサウ・チャン・カウィール 1世の埋葬 116 やその他の王達の埋葬では見つかっていない翡翠の仮面が
王ではなかった貴族の埋葬で発見されているのは興味深い所です。 埋葬 190 は 『古代マヤ王歴代誌』 によると 「北西外れの 建造物 7F-30」 からと
なっていますが、7F地区は南西で6号神殿の更に外側になりますが? 時代は古典期後期の 600-700年位になるようです。
(Incensario Zoomorfo, Chitomax, Baja Verapaz, Clásico Tardío)
次にバハ・ベラパス県チトマックスからの動物型香炉があり、これは古典期後期のジャガーを模った香炉で、球戯場の中央に埋納されていたようです。
キチェ県の南に位置する、アルタ・ベラパス、バハ・ベラパス、キチェ県等の所謂マヤ高地でも 先古典期から後古典期に至る
マヤの遺跡が数多く確認されていて、博物館でその遺物を目にします。 カウイナル等規模の大きな遺跡もありますが、一部はダム建設の為に水没して
その姿を消してしまったようです。
(Plato policromo, Uaxactun, Clásico Tardío) (Urna antropomorfa, Tierras Altas, Clásico Tardío)
左はウアシャクトゥンから人物が描かれた古典期後期の彩色皿です。 詳しい説明はありませんが、描かれているのは踊り手か球戯者でしょうか。 周囲に
文字があり、所有者や皿の説明が書かれているものと思います。 真ん中に穴が開けられていて、皿はその役割を終え、副葬品として所有者の埋葬に
添えられたものと思われます。
右は出土地がわかりませんが、マヤ高地からの人面が描かれた古典期後期の骨壺です。 肖像は被葬者のものでしょうか。
(Urna Zoomorfa, Purulha, Alta Verapaz, Clasico Tardío) (Incensario antropomorfa, Costa Sur, Clásico Temprano)
左も古典期後期の骨壺で、出所はアルタ・ベラパスのプルルハ?となっています。 人の顔がありますが、尖った嘴と胸の羽毛から鳥の姿をしているようで、
赤や緑で彩色されています。
右は古典期前期のテオティウアカン様式の香炉で、蓋と本体からなり、本体には丸い耳飾りを付けた典型的なテオティウアカンの人面が施されています。
南部海岸地域から。
(Vaso Policromo, Altar de Sacrificio, Clásico Tardío)
2列目の展示に移り、最初はアルタール・デ・サクリフィシオスの古典期後期の円筒型彩色土器です。 埋葬 96 からの副葬品で、いろいろな姿をしたワイ
(アルター・エゴ) が描かれますが、被葬者のワイでしょうか。 文字には製作者と 754年の制作日が記されるようです。
(Vaso Cilindrico de Jade, Entierro 196 de Tikal, Clásico Tardío)
そして特別室の一番の目玉、ティカルの翡翠製蓋付き円筒容器です。 翡翠の円筒容器はハサウ・チャン・カウィール1世の副葬品が有名ですが、
これはその息子 イキン・チャン・カウィール (在位 734AD - ) かその息子の墓と考えられる 神殿 73 の墳墓 196 からの副葬品で、
ハサウ・チャン・カウィール1世の容器とよく似ていますが、全体のバランス・形状はやや異なるようです。 前に突き出た突起は王権を表す王笏で、
容器の高さは 24.2cm、 直径が 10cm です。
(Vaso Cilindrico de Jade, Entiero 116 de Tikal, Clásico Tardío)
特別室ではありませんが、訪問時に開催されていた特別展示にハサウ・チャン・カウィール1世 (在位 682-734AD) の副葬品も展示されていました。
並べて見てみたいものですが、同じ日に両方の容器を見れたのは幸運でした。 ハサウ・チャン・カウィールの埋葬 116 は 1962年に1号神殿の第一基壇の
下部から発見されており、特別室の奥に埋葬の様子が復元されています。 容器の高さは 24.4cmで、埋葬 196 の容器とほぼ同じです。
(Vaso Policromo, Tikal, Clásico Tardío)
これはティカルの彩色円筒土器の最高傑作のひとつで、王たちの居所として使われた中央アクロポリスからの出土品です。 ティカル王朝晩年の
794年の日付があり、右上の槍を持った人物は名前は書かれていないもののカイマンワニの被り物をつけており、ヤシュ・ヌーン・アィーン2世(在位 768D - )
と考えられ、王に仮面を差出す着飾った人物は王妃になるようです。 それぞれ臣下を伴い当時の宮廷の様子を活き活き描いた逸品です。
(Vaso estucado, Los Encuentros, Baja Verapaz, Epiclásico 900-1100AD)
2列目の展示の最後にこの漆喰彩色された土器がありました。 Epiclásico (古典期晩期?) は後古典期前期にあたり、出土地のバハ・ベラパス県
ロス・エンクエントロスは、キチェ県とアルタ・ベラパス県に近く、チクソイ・ダムの上流で、チクソイ川流域は先古典期からマヤの集落が
沢山あった所でした。 (ロス・エンクエントロスは現在はダムで水没しているようです)
漆喰で描かれているのは当時の祭礼の様子で、仮面を付けて着飾った人物が前の二人から捧げものを受け取り、後ろに踊り手を従えますが、その様式
からはメキシコ湾岸地域の影響が窺われるようです。
3列目の展示台にはマヤの装身具がまとめて展示されていました。 貴族の埋葬からの副葬品だと思いますが、希少な翡翠や
遠い海から運ばれた貝が多く用いられます。 マヤの工芸技術や美意識を実感出来ると同時に、古典期の石碑や土器に描かれた王族が
実際に身に着けていたものと思うと 感慨深い展示です。 後古典期に入ると金を用いた装身具も見られますが、これは流入品でしょうか。
以下写真に出所と時代のみ付記します。
(Collar y Orejeras de Jade, Kaminaljuyu, Clásico Temprano 250-600)
翡翠製の首飾りと耳飾り、カミナルフユ、古典期前期 250-500年。
(Orejera, Collar y Brazalete de Concha, Tikal, Uaxactún, Kaminaljuyu, Período Clásico)
(Orejera de Concha y Jade, Tikal, Collar de Concha, Tierra Bajas,
Brazalete y Pendiente de Concha, Kaminaljuyu, Período Clásico)
貝製耳飾り、ティカル、貝製首飾り、ウアシャクトゥン、貝製腕飾り、カミナルフユ、古典期。
貝/翡翠製耳飾り、ティカル、貝製首飾り、マヤ低地、貝製腕飾りとペンダント、カミナルフユ、古典期。
(Collar de Jade, Nebaj, Quiche, Clásico Tardío, Orejeras y Muñequera de Jade, Kaminaljuyu, Clásico Temprano)
(Collar de Caracoles, Tikal, Orejera de Concha, Uaxactún, Clásico Temprano,
Muñequera de Caracoles, Tierra Bajas, Período Clásico)
翡翠製首飾り、ネバフ、キチェ、古典期後期、翡翠製耳飾りと腕飾り、カミナルフユ、古典期前期。
貝製首飾り、ティカル、貝製耳飾り、ウアシャクトゥン、古典期前期、貝製腕飾りマヤ低地、古典期。
(Collar de Jade, Tierras Altas, Período Clásico, Orejera de Jade, Río Azul, Clásico Temprano)
翡翠製首飾り、マヤ高地、古典期、翡翠製耳飾り、リオ・アスール、古典期前期。
(Collar de Concha, Orejera de Concha, Tikal, Período Clásico)
貝製首飾りと貝製耳飾り、ティカル、古典期。
(Collar de Oro, Tierras Altas, Orejeras y Muñequera de Oro, Gumarcaj,
Posclásico Temprano 900-1250)
金製首飾り、マヤ高地、金製耳飾り、金製腕飾り、グマルカーフ、後古典期前期 900-1250年。
(Reproduccion de Entierro 116 de Jasaw Chan K'awiil I. Tikal, Clásico Tardío)
特別室の奥に 上の方でも触れた ハサウ・チャン・カウィール1世の埋葬 116 が再現されています。 埋葬 116 は、ティカル遺跡併設の
土器の博物館 (Museo Sylvannus G. Morley) に別の復元がありましたが、現在は博物館が新しい建物に移転し、復元は古い建物に残されたままのようです。
副葬品の内、彫刻された骨、土器類、貝製品の実物は現地に残され、翡翠の装身具 は国立博物館に移されているそうですが、
ここにある翡翠の装身具は発見された実物になるのでしょうか?
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2015年 1月時点での特別室の展示は以上の通りですが、特別室からは時として海外展示会へ持ち出されるものもあり、また博物館は大量の収蔵品を抱える事もあって、
特別室の展示がいつも同じという訳ではないようです。 2011年 1月に特別室を訪れた F.O.氏から提供頂いた写真には上記展示には含まれない逸品が
あり、以下併せて紹介しておきます。
(Placa de Jade, Nebaj, Clásico Tardío) (Ornamento de forma de ave, Topoxté, Clásico Tardío)
左はキチェ県ネバフから古典期後期の貴族の肖像が彫られた翡翠のプレート、右はトポシュテからの鳥を模った貝製の装飾品で古典期後期の副葬品になり、
両方とも 2007年に日本で開催された 「インカ・マヤ・アステカ展」 に展示されていました。 今回も不在でしたが、どこかへ旅行中だったでしょうか。
(Soporte de espejo de pirita, Kaminaljuyú, Preclásico Tardío 500BC-250AD)
(Figurilla de Jade y concha, Tikal, Clásico Temprano)
左はカミナルフユから先古典期後期の鏡の台座で、
2014年にメキシコシティーで開かれたマヤ展
では見れましたが、今回もグアテマラでは不在。 メキシコでの説明書きでは黄鉄鉱の鏡の台となっていましたが、黄鉄鉱は鏡面で、
彫刻されているのはスレート製のこの裏面で、赤で彩色されているようです。 図柄は創造神イツァムナーフの被り物を付けた二人の人物が
洞窟の中でコパルを焚いて祭礼を執り行っている様子と言う事になるようです。
右は翡翠と貝で作られた仮面で、ティカルのガイドブックには1 1/2 インチとあり、4cm 弱の小さなもののようです。 時代は同じガイドブックで
450AD とありました。 今回も面会能わず でした。
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グアテマラ考古学民俗学博物館の特別室、マヤ文明が残した逸品揃いです。 定期的に展示品が入替えられるのか 頻繁に足を運んでみたいものですが、
日本からは遠いので滅多に行けず 残念です。 訪問時は先古典期のコーナーが改装中でしたが、もう完成している筈です。 また行かなくてはなりません。